さて、センター長と西岡の議論の概要は以下の通りだ:
センター長:「ポジトロンの半減期は2時間ですから患者の体内に注入しても患者への影響は無視できるが、医者が検査直後の患者と対面すると少量とはいえ患者からの放射線に被爆する危険があり、検査当日に結果の説明は出来ない」西岡:「このPET検査専門病棟は先月竣工したばかりです。被験者との対面が危険だと言うのならどうして、医師が被験者と直接接しなくても説明可能な部屋を作らなかったのですか? IT化の時代に、隔離された別室でドクターと被験者がそれぞれのディスプレイ上で同じ映像を見ながら検査結果を説明するシステムは簡単に出来ます。被験者は先生を被爆の危険に晒してまで直接対面して説明を受けたいとは思いませんが、ガンは早期発見が最重要だからこそPET検診に来ているのに、今すでに判明している結果を聞くために2週間後に再来院せよというのはサービス業としては最低のレベルではありませんか。この病院に都内から来るのは大変なのは先生もご存じだと思いますが」「私は都内某有名ガン病院からヘッドハントされて来た専門家だ」と言われたドクターは黙ってしまわれた。「貴方とこうして居るだけでも放射線が怖いから早く納得して帰れ」という雰囲気であった。私が被験者と言う言葉を使っているのに対して患者と言い続けるドクターの態度も一貫していた。もっとも結果を記録したCR-ROMは持ち帰ることが出来るのと言う。しかし、自分のパソコンに入れて映像が見られても誰が診断するのか?
まあ、ざっとこんなやりとりがあって、本院のPET検査が従来通りの「ガン患者への転移検査が目的で、健常者のガン検査への準備は出来ていません」というのが名医のご結論であった。センター長は大ガン病院からヘッドハントされた専門家と言うことだが、専門の医者にこういう反論をする患者(じゃない客)が出てきたと言う事がそもそも病院経営の変化の潮流なのだ。
ちなみに、私が通常お世話になっている鹿児島の厚地病院のPET検診では検査後ただちに陣之内院長に呼ばれて夫婦で検査結果を説明して貰える。先日、上記の体験をお話しして「陣之内先生は、被爆の危険性をどう考えておられるのですか?」と質問してみた。先生のお答えは「理論的には危険かも知れませんが、それよりも一刻も早く被験者のかたに結果を説明して差し上げたいという思いの方が強いモノですから、ずっとこうしています」と言うことであった。これこそサービス業の神髄ですね。
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