2006年5月24日水曜日

参画意識が重要だ

日本のように経済的に恵まれた社会では、社会人予備軍の学生たちに緊張感がない。多くの学生が「この社会、とにかく何とか食っていけるだろう」とタカをくくって、日々、無為に惰眠・惰食を貪っている。
その大学で講義をすることが多い。社会人を対象とする大学院やMBAコースなどの特別講義の場合は受講生の目が光っていているし、多くの質問が飛んで緊張感のある時間を共有できて楽しいのだが、学部学生に通年で毎週講義をするとなると大変だ。何よりも毎回90分間、学生たちに緊張を保って講義に臨ませるのは並大抵のことではない。容易に想像して頂けるだろう。

ところが、先日、朝9時前に大学構内を教室に向かっていたとき、「先生」と声を掛けて一人の男子学生が近付いた。「今日の宿題の発表を僕らにやらせて下さい」と言う。実は、先週出した宿題が「セブンイレブンの成功要因を分析せよ」であった。3名くらいのグループで実際にお店に行って自分の目で分析して報告するのが宿題だ。今どき、自分から発表をやらせて欲しいと申し出る学生が居ることを知ってびっくりした。
教室に入ってその日の発表グループを指名するのだが、多くの学生が良くやっていて驚いた。もちろんインターネットで調べたというお座なりのデータもあるが、その上に自分の目で調べたり、考えたことを加えている。ちゃんとパワーポイントで効果も付けてプレゼン資料を用意したグループも結構いる。友達の発表にも質問が飛ぶ。何が起こったのか?

その秘密が参画意識である。私の講義は参加型だ。「全出席でも発言のない学生には単位をやらない」と最初に宣言してある。毎回発言学生の名前を記録するのは面倒だが学生に協力させている。毎回宿題を出して、研究結果を次回に発表させる。発表者は教壇に上がってマイクを使って発表するが、発表の仕方、態度にも注文を付ける。宿題の成果、発表態度、質問の中身が成績を決める。
だから質問が多いのだ。これは参画意識を上げるためのインセンティブ。
大学は社会に出る準備であり、会社に就職するとグループで仕事をさせられることが多いから教室でもグループ研究をさせるし、発表の仕方が大切だからそれも教育している。こちらはプレゼンのプロだから注文も厳しいが、それでも懸命に付いてくる。
50名ほどの学生が居眠りもせずに熱心にやっている秘密、それが参画意識とインセンティブだ。一方的に知識を伝達されるのでなく、自分たちが考えたことを壇上に上がって、発表し、質問に答える。やればヤルほどいい成績が取れる。それが気に入ったようだ。

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